「プロジェクトファシリテーション 実践編 ふりかえりガイド」を読んだ

「プロジェクトファシリテーション 実践編 ふりかえりガイド」(株)永和システムマネジメント オブラブ 天野勝 のPDFを読んでみた。
http://objectclub.jp/download/files/pf/RetrospectiveMeetingGuide.pdf
仕事でKPTを毎週しているが、ベストプラクティスやファシリテーション方法についてちゃんと調べたことがなかったので読んでみた。
「合意 = 同意 + サポートしますという意思」 は使っていきたい。またアンチパターンが書いてあるのも使いやすい。SQLアンチパターン本のように「今の状況アンチパターンだ」と把握できて、かつ解決策が書かれているので 「今よりは少しでも良くなるだろう解決策」 が取れてとてもよいと思う。
読書メモ
- ふりかえり
- 過去の学びを、幸福な未来を作ることに活かす行為
- PDCAのCAにあたる作業
- Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)
- PDSAと呼ぶこともある
- Plan(計画)、Do(実行)、Study(学習、研究)、Adapt(適用)
- 仕事 = 作業 + 改善
- ふりかえり会
- 行動可能な改善策を探し、試す勇気を得ること
- これまでの行動を思い返し、新たな気づきを得ること
- やってみてうまく行った行動を、チームに定着させること
- メンバーの多様性を受け入れ、信頼関係を築くこと
- 問題を洗い出す
- 率直に言えるようになる
- 気づき、信頼関係の価値の共有ができる
- 原因の特定には時間がかかる
- 振り返りをはじめた段階だと、出すだけでも十分意味がある
- 率直に言えるようになる
- 改善する
- 悪いところを良くするだけが改善ではない
- 良いところをより良くすることも改善
- 合意 = 同意 + サポートしますという意思
- 振り返りメリット
- 対話の場作り
- ナレッジの共有
- コンテキスト(状況に関する情報)が大事
- チームビルディング
- アイデア創発
- 質の高いアイデアがうまれやすい
- チームとして前向きになれる
- コーチング効果
- 目標達成に対して自主性が増す
- 行動への動機付けがされる
- Keep
- 今やっていてこれからも続けたいこと
- 「〜する」の形式で具体的に書く
- Goodな事象は「これを生み出した要因」を考える呼び水になるのでよい
- Tryしてみてうまく行ったことをあげる
- 以前よくて続けるうちに効果が出なくなったものなどはkeepから取り下げるべき
- Problem
- 問題と認識していることを書く
- 将来発生しそうな問題(リスク)も上げる
- 以下に分割してもよい
- 不満に感じているところ
- 工夫できそうなところ
- Try
- 試したいことを書く
- 動詞形式がよい
- 試したいことを書く欄であり、実施しなくてはならないこと
- 進行の工夫
- 「試すこと」だけを考えるとアイデアが出にくくなる
- 誰が行うのか、具体的にどうするのかは後で考え、アイデアを発散させるのがよい
- その次に「試すこと」を「試す」ことについて合意する
- ふりかえり会の効果を上げるヒント
- グラウンドルールを決める
- テーマを決める
- 議題のレベルを分ける
- 重たい問題があがると軽い問題を出しにくい
- 扱う問題ごとに別の日に分けたりするとよい
- 解決志向と原因追求を使い分ける
- 解決志向
- 参加者が感じている問題を共有し、何かしらの改善策を考えることを第一目的とする進め方
- 問題の原因を追求することも大事だが、各人の問題意識を共有し、何かしらの改善策を参加者全員で考えることに重きをおく
- 原因追求
- 問題の背後に隠れている原因を探し出し、その原因に対する改善策を考える進め方
- 原因を探し出すのは時間がかかるが、原因を特定した上で改善策を考えることができる
- 重たい問題は改善策を考えるのに時間がかかることが多いので、ふりかえり会になれるまでは解決志向がよい
- 解決志向
- 短いサイクルで実施する
- 長いサイクルでも実施する
- 「重要だが緊急性が低い改善施策」への取り組みに焦点を当てられる
- 自身の成長・次への成長への動機づけにもなる(短いサイクルだと自身の成長に気が付けない)
- 定期開催と臨時開催を使い分ける
- ふりかえり会に割く時間を短くして参加者の負担を小さくすることを心がける
- 定期開催のデメリットとして、形骸化してしまう可能性が高い
- 抑制するためにも、ふりかえり会から得られる効果を実感できるように、Keepについてじっくりと思い返すようにしてみる。何かしらKeepすべき効果に結びついた行動があるはず
- 臨時開催
- 定期開催と別日でもよいが、定期開催に続けて実施でもよい
- 臨時開催は関係者だけでもよい
- ただし決まったことは全員に伝える
- スケジュールに組み込む
- 付箋紙を活用する
- 一人で思ったことを書き出す
- それぞれ発表するだと意見が言いにくい
- 声の大きな人のアイデアに縛られず、全員に参加の機会を与えるという特徴がある
- 書きながら貼ると直前にはられたものに考えが引きずられてしまう
- 貼られた付箋を分類すれば、どのような傾向があるかを知ることにも役立つ
- 分類しすぎるとかえってわかりにくくなるので気をつける
- 一人で思ったことを書き出す
- Goodを出す
- Keepは続けたいという「行動」をあげるが、よかった事という「現象」をあげてもよい
- Whyを共有する
- なぜその意見を出したのか、なぜそれをProblemだと思ったのかを聞くと対処方法が変わることがある(より本質的な対処になりやすい)ので意識して言う/聞いてみる
- ただし時間がかかるので注意
- ふりかえり会が成功する理由
- 思考のベクトルがそろう
- 解決志向アプローチ
- SFA: Solution Focused Approach
- ブリーフセラピーという心理カウンセリングの手法の1つ
- 原因追求ではなく、「解決」に目を向けるということが特徴
- 解決志向アプローチの中心原理として以下3つがある
- もしうまくいっているなら、それを直そうとするな
- もし一度うまくいったのなら、またそれをせよ
- もしうまくいかないなのなら、なにか違ったことをせよ
- 解決志向が有効な理由
- 原因を追求していくと、ダメな自分に気がついてしまい、心理的にネガティブな状態になってしまうのを防ぐことができるから
- みんなが意見を言える場である
- 人を褒めたり、自分だけしか感じていないと思うような問題をあげたりするのは勇気が必要
- 「いっても意味がないことだと思っていた」、「言ってはいけないことだと思っていた」が実はみんな同じことを感じていたということが大いにある
- 「これらのことをすることが当たり前である」、「気軽に言い合える」場を作ることに意味がある
- 自分のためにやる
- 合意 = 同意 + サポートしますという意思
- 無責任な同意だけではなく「いつでも困ったら助けますよ」というのが本当の合意
- ポジティブで始まり、ポジティブで終わる
- KeepではじめてTryで終わる
- 新近効果だ!!(行動経済学まんが「ヘンテコノミクス」の読書ログで紹介している心理現象)
- ふりかえり会の現場
- 「今週やったこと」みたいな思い返す時間をとるのよい
- Tryの確認(Keepに移すなど)
- できなかった言い訳はしない(時間の無駄)
- Keepに絞って考えさせる(ProblemやTryのことは考えない)
- 多めのノルマを課す(一人5個だしてとか)
- 些細なことも上がってきたりする
- ダブった意見は一緒に出す
- 心理的距離が近づく
- 出した人に補足してもらう
- 多めのノルマを課す(一人5個だしてとか)
- Problem
- 「個人的な意見ですが」「私だけかもだけど」などの枕言葉はいらない
- 枕詞をつけなくても意見できるチームにしていく
- 未来への不安もあげる
- 具体的な問題をあげる
- 「〜していない」という行動の否定、「〜がない」という存在の否定の意見が上がったら要注意
- この改善は「〜する」という否定を裏返した肯定の策になってしまう(改善策が広がらない)
- 改善を意識してProblemをあげているだけとも取れる
- Whyをみつけること
- 「個人的な意見ですが」「私だけかもだけど」などの枕言葉はいらない
- Try
- 解決策ではなく改善策
- 「こうしたらうまくいくかも」という案をだしてもらったほうがより活発によい案がでやすい
- 解決策として出したもので解決できなかった場合に深刻に考えてしまいがちになってしまう
- 「試すとうまくいくかもしれない解決策」**「今よりは少しでも良くなるだろう解決策」**という雰囲気を大事にするとよい
- Problemが多く出たらみんなが重要だと思うものを優先的に考える
- 2:8の法則(パレートの法則)
- 無理にやらない
- 「自分たちのために、自分たちができることを、自分たちでやる」 というのが大前提
- すべてやらなくても、今の状態よりもちょっとでも改善された状態に向かいそうであればそれで十分
- ファシリテーションのポイント
- 具体化を支援する
- Actionがあいまいなままだと実行されないことが多いので逃さずに具体化するような質問を投げかける
- グラウンドルールから外れていることをちゃんと指摘する
- 優先順位をつける
- Tryにするかどうかに時間がかかることがある
- 思い切って後回しにするなど
- 時間を守る
- 合意させる
- TryやActionについては何を実施するのかの合意が必要
- 時間がなくなった場合、いつどうやって合意するかの合意をしておく
- 具体化を支援する
- ふりかえり会アンチパターン
- Problemファースト
- Keepを飛ばしてProblemから意見を出し合い雰囲気がネガティブになる
- 時期ずらし
- 定期開催の日程が徐々に延びてフェードアウトしてしまい、ふりかえり会についてみんな触れなくなる
- 分析中毒
- 問題の原因追求に時間をかけすぎる
- 解決できない問題については、解決するのを諦めるとよい
- 期待過剰
- Problemをあげておけばきっと誰かが見て手を差し伸べてくれると思っている
- 結局誰も見てくれない、助けてくれないことが多い
- Problemをあげておけばきっと誰かが見て手を差し伸べてくれると思っている
- 空中戦
- 議論するが話が抽象的になったり堂々巡りしたりする
- 議論の内容を誰でもみえるようにする
- 残り続けるProblem
- Problemがずっと残っていて、有効な改善策を打ち出せずに消えない
- 解決するのを諦め取り下げる
- カテゴリ化による具体性の欠如
- あがった意見をカテゴリ化するが、そのカテゴリをインプットとしてしまい具体性を欠いたアウトプットになってしまう
- それぞれのProblemに対してTryを考えたほうがよい
- Problemファースト
- KPT/KPTAアンチパターン
- わがままTry
- TryされるがProblemが減らない
- 計画先行
- Problemがすくない割にはTryが多い
- 言ったもの負け
- Problemがあがっているが、Tryが上がらない。あげたTryはすべて実施することになっている
- Tryをあげた人が作業するわけではないというルールを作る。Tryをあげる際、アイデアを発散させるようにする
- 救われないProblem
- Problemばかり増えていくがTryはあがらない
- 解決志向でTryをだし、問題の深堀りを程々にする
- わがままTry
- KPTT(けぷとつー)
- Keep, Problem, Try, ToDo
- KPTの「言ったもの負け」を回避するために、実施する改善策としてのToDoを分けるフォーマット
- KPTA(けぷた)
- Keep, Problem, Try, Action
- KPTの「やらずじまい」を回避するために、Tryのうち選択したものを、行動できるようにActionとして具体化するフォーマット
- FAQ
- 何人ぐらいでやるのがよいか?
- 10人ぐらいまでが望ましい
- 全員集まらないがやるべき?
- 欠席する人から事前に意見をもらっておく
- 結果をみんなにフィードバックする
- Keepが増えすぎておさまらない
- 定着したとおもうKeepは別の場所に保管する
- ナレッジに昇華させるのもよい
- Keepが現状にそぐわず足を引っ張ってしまう場合もあるので定期的に棚卸しをするのも重要
- ふりかえりのテーマが決まらない
- Problemの中で根が深そうなものをテーマにしてみる
- 「なんでもよいから意見をあげて」だと出しにくい
- わかりやすいテーマを掲げたほうが出しやすい
- ふりかえりの手法を変えてみるとよいかも
- ふりかえりを拡張する「ふりかえりカタログ」 - Qiitaあたり参考になる
- Tryが上がりすぎて困る
- ドット投票でTryを選択するのが簡単な方法
- 何かしらの軸に沿って並び替えるとよいかもしれない
- 実施のしやすさ
- 効果が得やすいかどうか
- など
- 何人ぐらいでやるのがよいか?
- 個人で行うふりかえり
- 志向の順番は気の向くままに
まとめ
プラクティスをちゃんと確認して実践したほうがアンチパターンへの予防ができる。しかしあれもこれもやろうとすると目的見失いがちになるし疲れるので、プラクティスを知った上で気楽にはじめて徐々に良くしていくべきなんだろうな。